R5 持続可能な観光地づくり推進事業 乗鞍高原サステナブルツーリズム検討会レポート

19分

アルプス山岳郷エリアでは、持続可能な商品(サステナブルツーリズム)の研究開発が課題の一つとしてあります。エリア内で様々な取り組みが進められているなか、取組みの前提であり、基盤となる考え方(信念や価値観)の言語化とその整理・共有が追い付いていない現状があり、状況の改善が急務だと考えられます。そこで今回の検討会は、乗鞍高原でこれから取組みを始めていくサステナブルツーリズムの研究開発のために、大事にしたい信念や価値観を見出し、行動指針として言語化することを目的にしたものです。当日の検討会の内容とその後の整理について、レポートにまとめました。

タイトルR5 持続可能な観光地づくり推進事業
乗鞍高原サステナブルツーリズム検討会
日 程2024年2月13日(火)
時 間10時〜12時
テーマ乗鞍高原においてヒストリーを作っていくための基盤とは?
内 容・地域の100年前と100年先を思い描く
・100年後、地域が存続するために何が大事か
・100年先に届けたい行動指針(案)
会 場ふれあいパークのりくら
参加者12名
主 催一般社団法人松本市アルプス山岳郷
運 営株式会社マカリスター考務店

目次:
・検討会の狙いとゴール
・地域の100年前と100年先を思い描く
・100年後に地域が存続するために大事なものとは
・100年先に届けたい行動指針(案)

検討会の狙いとゴール

ゼロ・カーボンパークに登録された乗鞍高原におけるサステナブルツーリズムを検討することを目的にした検討会。セツ・マカリスター地域づくり推進事業部長(以下:セツ)によるファシリテーションで会議が進行しました。

セツ「乗鞍高原ミライズでも様々な動きがある。どこで何がどう動いているのか、その動きの大元は何なのかというところがブレていると感じるところもあるので、ミライズの中で何が大事なのかを話し、共有できたらと思います。ここで皆さんと一緒に行動指針を考えたい。持続可能な観光地づくり推進事業は3年間の事業で今年が1年目。今回が1回めの検討会です。」

狙い:今まで地域で取り組んできたことをベースにして、今後の持続可能な取り組みを加速すること

今日のゴール:乗鞍高原に住む人たちが乗鞍高原を舞台として開発を進めるための行動指針(提案書)の作成

セツ「まずは100年前と100年先を想像してほしい。大きな単位で考えて、変わらないものは何なのか?また、実際にこの地で何が大事なのか。振り返りながら考えて頂きたいと思います。まとめの部分で、サステナブルツーリズムをこの乗鞍高原で進めていくときに大事にしたい行動指針をアウトプットしたいと考えています。」

ワーク1:地域の100年前と100年先を思い描く

ワーク1では、参加者それぞれが乗鞍高原の100年前と100年先を想像しました。参加者の意見は以下の通りです。

百年前・炭焼きや林業が盛ん。冬は出稼ぎ。静かに暮らしていた。
・主食は蕎麦だった。
・食は山の恵みによりまかなわれていた。
・産業は農業・林業、林鉄。
・現代よりも草原が多かった。
・主は宮の原の下にほとんどの人が住んでいて、学校も今の電光掲示の上あたりにあった。
・「番所」という地名について。夏の間に畑で作った作物を監視するための番の小屋があったと聞いている。傾斜地でも何でも畑にして作物を作っていたから、食糧をある程度確保できていた。
・大樋鉱山があった(中が危ないから今は開放していない)。武田信玄の時代の開拓と言われている。一説によると浅間温泉や白骨温泉が栄えたのも、その労働者が休暇に行って栄えたと言われている。当時労働者として入ってきて定着している人も結構いる。一時期はかなり栄えた。戦前、戦中は特に金属が必要だったから。錫と銀も多少出た。
・割と山にこもっている暮らしが主だが、少しずつ交易が開かれていき始めた時代なのでは。
・20~30年で急速に観光業にシフトしていったことからすると、100年前は過渡期だったのでは。
百年後・100年後は、100年前に盛んだったものがいくつか戻ってくるのでは。炭は貴重なものとして販売。林業も復活せざるを得ない。発展的な林業。蕎麦は主原料ではなく観光資源として。
・観光業がある程度主産業となるのでは。
・草原に関して。再生計画等を進めつつ、若者に引き継ぎつつあるので、古き良きものを残していくマインドが残っていれば、開発されたエリアよりも貴重な唯一無二なエリアになる。
・移住等により様々な人(多国籍)で賑わっているのでは。
・学校については、校舎が足りなくなって増設。
・今までは世襲で家業を継いできた人が商売をやっているような感じだったが、よりスペシャリスト化し、専門知識に長けている人が商売していく地域になるのでは。・自然の中で暮らすということは大切にされつつ、この100年間の間で外の人たちとの交友やつながりが深まる。またテクノロジーがもっと発達。自然の中の暮らしが担保されつつ、テクノロジーを享受しながら利便性がある暮らしへ。・温暖化が進むと夏だけ避暑に来る人が増える。モビリティ、暮らし方に温暖化対策が進む。暮らしではカーボンオフセット、林業、テクノロジー、少し昔の資源循環を取り入れつつ、人との交流や自然との関わりなど、体験に対してお金を払うことが進んでいく。うまくバランスが取れた地域になっていたらいい。・安全な水・食・環境が残っていてほしい。水がなければ食物も作れない。水からはじまっている。水のある地域にしたい。・世界情勢がどうなるか分からない。食糧難になるのでは。この地域でもある程度の食糧は作って行かないと。外から食糧がはいってこなくなると困る。そういう時代が来るんじゃないか。

ワーク2:100年後に地域が存続するために大事なものとは

次のワークでは、100年後に地域が存続するために何が大事かを話し合いました。

ここでは、「食糧」が大きなテーマであることが共有されたほか、現代では経済と環境が相反する面があるため難しい面もあるが、それらが調和できる形が本来目指すべきところでではないかということや、豊かさの概念・休暇の取り方についても話題に上がりました。

その上で、各自が思う「100年先に届けたいもの」を行動指針の素となるキーワードとして一つずつ出し合いました。

参加者が付箋に書き出したキーワードは下記のとおりです。

・ゆとり(自然と人が生きるために必要なもの)
・心と体の豊かさ
・みんな仲良く暮らしたい
・関係する人達全てに情報伝達が行き渡る
・敵はいない 
・子どもや来訪者に乗鞍の歴史と文化を伝える言葉と気持ちをもつ
・乗鞍の伝統を守っていく精神・魂
・後世に残すべき財産(エネルギー・資源・環境)を先食いしない精神
・ここに住む選択がある これからの暮らしにフリーダムto choose 自分の意見を言える
・認め合う。
・自由であること
・透明性 情報があって参加するしないは自由(義務ではなく自由から)
・自然と共に生きる
・自然に優しい暮らしを実践する(環境に負荷をかけない暮らし)
・経済的な豊かさ
・生命を祝う祭 

100年先に届けたい行動指針(案)

キーワードを出し合った後、全体を俯瞰し、改めて大事なポイントを整理する時間を持ちました。

・情報の共有(全ての情報が行き渡る)
 行き渡ることと透明性
 アナログとテクノロジーの両立
 大きなFAQデータベースつくる 

・コミュニティ
 チームワーク
 隣組単位で顔を見ながら話を進めていく
 入口は?どこまで関われるのか?
 地域と伴走したい人がどう関われるかをクリアに
 大野川区の透明性

・気軽に顔を合わせる場所の必要性
 人と人をつなぐ場所としての商店
 ライフスタイルを共通したところでつくる
 健康的な助け合い 共存・共生
 祭(すもも祭復活!?)

キーワードの整理をしている途中で検討会は時間切れとなりましたが、今回の検討会での対話を通して、地域で大事にしたい行動指針の素が確実に見えてきました。

その後、当日参加者から出されたキーワードやポイントを事務局で精査(否定語を肯定語に言い換える、要約するなど)し、整理を進めました。行動指針の素として出てきたキーワードを大きく分類すると「地域コミュニティの存続と発展」、「自然と共に生きる暮らしの実践」、「豊かさを実感すること」の3つに分けられそうです。全体を俯瞰してみると、相互に影響し合い、好循環が生まれることで、100年先に地域が存続していく土台が強固なものになっていく……、そんな未来への展望が見えてきそうです。また全てに関係があり、つながりを強めていく役割を果たすであろう「祭」の存在も見逃せません。

上図はあくまでも草案にすぎませんが、ここから地域関係者に共有し、ご意見をいただきながら、サステナブルツーリズムを乗鞍高原で進めていく際に大事にしたい行動指針の確立に役立てるよう、更にブラッシュアップを進めていく予定です。

以上が今回のレポートです。引き続きご協力をよろしくお願いいたします。