地域経済開発、国際事業戦略、イノベーション・コンサルタントとして日米を中心に多くのプロジェクトを手がける山﨑 満広さんをお招きして開催した「100年先の未来戦略・持続可能な地域づくりセミナー」の内容をレポートにまとめました。
タイトル | 100年先の未来戦略・持続可能な地域づくりセミナー |
日 程 | 2023年12月13日(水) |
時 間 | 10時〜15時(9:45受付) |
内 容 | 講演会・10時〜12時/意見交換会・13時〜15時 |
会 場 | 長野県松本市さわんど温泉 (グレンパークさわんど2階会議室) |
参加費 | イベントは無料 |
定 員 | 40名 |
主 催 | 一般社団法人松本市アルプス山岳郷 (後援:一般社団法人長野県観光機構、松本市) |
運 営 | 株式会社マカリスター考務店 |
目次:
【山﨑 満広さん講演会】
【グループワーク(カタロウド)】
【意見交換会】
【山﨑 満広さん講演会】
ポートランドをはじめとする、これまで山崎さんが関わってこられた国内外での事例や実績(執筆書籍含む)についてご紹介いただいた後、下記内容の講義をいただきました。(山﨑さんのプロフィールについてはこちらへ)
1 日本の地域の勝算
2 ビジョン
3 地域経済開発の基礎的な考え方とそれを支えるもの
1 日本地域の勝算
「日本は向こう50年でかなりイケてる国になる。」というポジティブなメッセージから始まった山﨑さんのお話。その根拠とは……?
山﨑さん「世界の長期的人口推移の予測を見てみると、明らかに異常な人口増加の時期に生まれ育っているのが自分達の世代。1950~2100年くらいは、成長が当たり前という時代。しかし、もっとなだらかな伸びになる必要がある。それをやりやすいのが日本ではないか。地形・自然・古き良き文化を思い出し、経済的・文化的・社会的に無理のない成長を念頭に置きながら、それをいかに続けられるかにかかっている。」
山﨑さん「幸せ度と人口密度はある程度反比例すると言われているなか、日本の1平方キロメ―トル当たりの人口密度は1,100人(OECD先進国の中で世界2位)。世界一住みたい国と言われるスウェーデンは日本の1/10。とはいえ、日本は今後、時間と共に勝手に人口が減少する。人口減というと、ネガティブな側面ばかりがクローズアップされているが、実は人口が少ない方が関係密度(人の触れあう密度)が上がって幸せをより感じられるという側面がある。こういう国は、一人あたりの生産能力が高い。どうやって経済価値を高め、少人数でどういう風に経済を回すかが重要。地べた(自分の住んでいる界隈)でもっと幸せを感じられる瞬間や、もっと力を入れるべきポイントを判断できる組織が必要。そのためには、何のためにどこを目指してやるかのビジョンが肝要。」
2 ビジョン
日本の良くないパターンは、今の現状の「ない(人がいない 交通が悪い 店が少ないなど)」ところばかり気にして、病んでいる所に解を生もうとし、課題全てに対応するとお金がバラバラに使われていき、負の循環を生むところにあると山﨑さんは指摘します。その上で、アメリカのリーダーシップ型のビジョンの描き方について紹介いただきました。
山﨑さん「この図で示されたことが地域で一致していないと、進んでいく内にバラバラになってしまうので、個人の能力や特性を活かし、掛け合わせていく中で、これらの共通言語を作っていくことが大事。アメリカでは、現状をよく見つめた上で、なりたいところを見つめる。どうやったらそこへ行けるか。そのために関係ないことを忘れて勢いつけて注力する。どういう厳しい道をいかなければならないのかを見つめた上で一番行きやすい道を探して進んで行く。エネルギーを一点に集中させる。逆に日本はピンボケになりがち。その違いがある。リソースが少なくなっているからこそ、全てのリソースを一点に集める必要がある。」
3 地域経済開発の基礎的な考え方とそれを支えるもの
地域経済開発とは一体何のことなのか、またそれを成立させるために必要なこととは……?
地域経済開発とは…
地域コミュニティの生活の質の向上(雇用とお金でまわるが、精神・感謝の気持ちなど包括的に考えないと)と雇用の増加を図るための様々な政策、プログラムや活動のこと。
・各々のコミュニティの特徴やニーズにより戦略やアプローチを変える必要がある
・最低でも3~5年の長期的なコミットメントが必要。
・短期的に変わる政治家や公的予算に左右されない経済開発専門の組織が必要
山﨑さん「山のライフスタイル・車の移動・地産地消の食事など、山岳郷として特徴的なものを据えた上で、地べたの人たちがこういう道筋でやっていこうというのを試行錯誤して考える必要がある。他の山岳地域から知見をもってくるのもいい。その上で日々やっていくのが理想。20年後のビジョンをもつ。自分はそのビジョンの中のこの部分をやっているという人がたくさん出てくると良い。心もつながるし経済も回る。そして外部の専門家を頼り、外からお金をもってくる(国、銀行、スタートアップ支援の財団、クラウドファンディング)という仕組みをもって、やろうとしていることが続くように進めていく必要がある。」
〇地域経済開発(DMO)のあるべき姿
さらに、地域経済開発(DMO)のあるべき姿として、上記6項目を挙げていただき、客観的に解を生んだり、ビジョンに沿っているかどうかを自分達で判断できる中立的な立場を守る大切さや、普段から「お互いさま」で助け合っていくというポジティブなコミュニティを作ることの大切さなどについてお話いただきました。
〇地域経済開発 5つの礎石 行動指針
実際に、どのようなプログラムを実行していくかについては、上図の行動指針と共にご説明いただきました。
山﨑さん「一つ重要な考えとして、TIF(Tax Incrument Financing)がある。地域開発等のプロジェクトにおいて、開発後には固定資産税や事業税等の税収が増えることを見込んで、その将来の税収増を返済財源にして資金調達を行う手法。人気が増える見込みがあれば、それができるし、ここでもできる。日本では規制があるが、受益者負担金や会費などには規制がない。自分達の頭の中の規制を緩和していけば必ずできる。」
最後は、地域の未来へ向けたポジティブなメッセージと共に、頭の中の規制緩和を!という力強い言葉で講義が締めくくられました。
【グループワーク(カタロウド)】
山﨑さんの講義に続くグループワークでは、Mitsu Yamazaki.incの江川海人さんより、普段ブランディング・まちづくり・都市づくりのコミュニティイベントにおいて、部署の違う人のつながり、世代の違う人のつながりなどをつくっているツール「カタロウド」を紹介いただき、参加者で実践しました。
グループ内での対話のきっかけである「質問」に答えながら、よりよい対話のために質問を深掘りしたり、答えが内側から出てくるのを待つ「沈黙」の時間を楽しんだり、違いを受け容れるなど、温かな時間が流れました。
【意見交換会】
参加者同志のつながりの温度が増してきた午後の意見交換会では、グループごとに共通のテーマに沿ってディスカッションを行いました。
以下4項目のテーマについて話し合いました。
①持続可能な地域はそもそも目指したら何が待っているのか?
②持続可能な地域になるために必要なものは何?
③現在地域内で取り組んでいることはありますか?
④それぞれの立場でこれから取り組みたいことはありますか?
グループごとに熱い議論が交わされ、ディスカッション後半には、バラエティに富んだアイデアを参加者皆で共有しました。
(参加者の感想より)
・一緒に学んでつながる場って大事。できたつながりをどういかして連携するのかが大事なのかなと思う。皆さんの思い熱量をどうアクションにつなげていくのか、一事業者としてはできなくてもつながって何ができるかということを引き続き探っていきたい。
・ビジョンはまとまっていると思うので、一事業者としても具体的立場をとらないと。シンプルに笑い合いながら進んでいきたい。
・地域を愛する事、地域を守りたい、ビジョンを目指したい方がこんなにもいるということに感動した。
・町側と山側の連携が足りないと言われている部分もあるけれど、こういう形でみなさんとつながっていく機会があればいいなと思った。
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