取組インタビュー#19

20分

長野銀行「地域に寄り添い伴走する地域の金融機関として歩む」

~持続可能な地域の未来を共につくるために~

地域の事業者にとって、新たなサービスや新たな設備投資を展開する際、また経営上の病める時も健やかなる時も大きな支えになる地元の「銀行」。アルプス山岳郷エリアで、古くから個人・法人事業者の方が関わりを深めてきた銀行の一つが「長野銀行」です。今回は、地域を支える金融機関としてあり続ける、長野銀行 波田支店の安曇地区(山岳郷エリア)担当 立岩綾佳さんに、この地域とのこれまでの関わりや現在の取組み、そしてこれからについて話をお聞きしました。

アルプス山岳郷エリアとの関わり

△長野銀行 波田支店の立岩綾佳さん 乗鞍高原にて

「ここは自然に癒される、とてもいい場所。事業者の皆さんもお一人お一人とても親切で優しいのですが、それだけでなく、地域を盛り上げようという気概を強く感じる場所ですね。」

地域の印象についてこう語ったのは、2022年の春にこのエリア担当として着任した立岩さん。お客様の経営課題等の解決のため足を運ぶ度に「この地域が好き・事業者の皆さんの役に立ちたい」という思いが強くなっているのだとか。

長野銀行とアルプス山岳郷とのつながりを遡ると、昭和30年12月に旧安曇村の入り口である島々地区に『安曇村出張所』を開設したのが始まりだそうです。昭和50年代頃まで、北アルプスの山小屋の集金を一泊二日の登山で行っていたのだとか。昭和32年に安曇支店となり、平成22年に波田支店に統合された後も、上高地・乗鞍高原・白骨温泉・さわんど温泉等の旅館・ホテル・山小屋や飲食店等へのご融資や集金業務等を通して、山岳郷エリアとの関わりを持ってきたそうです。

立岩さん「最近では、『ながぎん地域応援隊』を設置し(令和3年5月)、『のりくら高原ミライズ構想協議会』・『ゼロカーボンフォーラム』への参加のほか、ゼロカーボン体験イベントへの開催準備協力、上高地でのボランティア清掃などを通じて、地域事業者や地域の皆さんとの関わりを深めています。」

この他にも、令和3年7月には、環境省中部山岳国立公園管理事務所と「中部山岳国立公園パートナーシップ協定」を締結した長野銀行。中部山岳国立公園の美しい景観とそこに滞在する魅力、また国立公園のブランド価値を維持・発信し、自然環境の『保全』と『利用』を両輪で推進していくための協力関係を築き、取り組みを進めているそうです。

△中部山岳国立公園の魅力発信のために波田支店に掲出した上高地の写真。左側から長野銀行ソリューション営業部斉藤主任(ながぎん地域応援隊)、小林支店長、中部山岳国立公園南部地域事務所長森川さん、同事務所原田さん(長野銀行波田支店提供)

上高地のボランティア清掃作業への参加

アルプス山岳郷エリアとの関わりの中で、地道な取り組みを続けているのが「上高地を美しくする会」のボランティア清掃活動。2年程前から会の一員として参加し、ごみ拾いの他、外来種除去、歩道の整備や落ち葉かきなどを行っているそうです。波田支店だけでなく本部や近隣の支店からも参加を募り、積極的に参加をしているとのこと。

△上高地清掃活動を行う立岩さんら(長野銀行波田支店提供)

立岩さん「上高地の清掃活動は、上高地や周辺の山々の美しい自然環境を未来に残していこうという目的をもった活動で、地域事業者さんの思いに賛同して、私たちも力になれたらと参加させて頂いています。清掃活動をしている姿を見た観光客の皆さんが、この地域を美しく保つために自分に何ができるかと考えるきっかけになれたら、それもまた嬉しいですね。」

「上高地を美しくする会」は、主に上高地で事業を営むホテル・山小屋・飲食店等、この地域に関わるあらゆる施設や企業、関係行政機関が会員となり活動を行うボランティア活動。昭和38年に結成されて以来、精力的な活動が続いており、その活動回数は上高地開山期間中、1年で十数回にも及ぶのだそうです。

開封済みワインコルク再資源化のサポート

立岩さん「地域事業者さんとの関わりについては他に、開封済みワインコルクの回収~再資源化を手掛けるエコルクさんの活動のサポートにも力を入れています。ホテル・ペンション・飲食店さんでこれまで捨てられていたワインコルクが、エコルクさんの活動によってコースターなどノベルティグッズ等の新たな製品に生まれ変わり、ごみの減量につながっています。SDGsの観点からも応援したい素晴らしい活動です。回収先候補の事業者さんと多くの繋がりをもつ私たちだからこそできることとして、エコルクさんと事業者さんをお繋ぎするお手伝いをしています。」

△地域事業者から回収したコルクを再生して、イベント等で配布するためのコースターを作成。

△コルク再資源化の流れ エコルクプロジェクト from信州 エコルクより提供

観光事業者が多数おり、たくさんの開封済みワインコルクが出るアルプス山岳郷エリアでは、立岩さんら波田支店の尽力の甲斐もあって、ワインコルク回収~再資源化の輪が今、急速に広がっているようです。

ご自身のワイン好きがきっかけで、コルク再資源化事業を始めたという、エコルク代表の原田佳澄さんにも、最近の様子を伺いました。

△エコルク代表の原田佳澄さん これからの展開にも意欲的。

原田さん「2021年9月に活動を始めてまだ1年足らずですが、長野銀行さんと繋がったことで、ご協力の輪・再資源化の輪が驚くべきスピード感と共にぐんと広がりました。私自身のつてだけではたどり着けない様々な事業者さんをご紹介いただき、このアルプス山岳郷エリアでも上高地や沢渡、乗鞍高原などでご縁を頂いています。本当に感謝しかないですね。」

活動に賛同する事業者が増えていき協力の輪が広がっていく今、とにかくこの活動について「楽しい!」と語る原田さんの瞳と表情は明るく、生き生きとしていたのが印象的。

地域の事業者をよく知る銀行が媒介となって事業者と事業者のニーズをつなげながら、SDGsに即した前向きなムーブメントを起こしていく。そんな可能性を秘めた取組みの一つの形がここにあるのかもしれません。

△この日も立岩さんが 開封済みコルクをお店から回収。長野銀行波田支店は集金業務等のついでにお店からのコルク回収作業を引き受けている。( 乗鞍高原YUMYUMTREEにて)

地域に寄り添い伴走する地域の銀行として この地域で描くミライ

アルプス山岳郷との関わりを近年ますます深めていく長野銀行ですが、最後に、この地域での期待感や、これからの関わりについて波田支店の小林支店長と立岩さんにお聞きしました。

小林支店長「ゼロカーボンへの注目度が高まる今、乗鞍高原は2021年3月に環境省から「ゼロカーボンパーク」第一号に登録された他、脱炭素の取組みを進める国のモデル事業「脱炭素先行地域」に選定され、将来にわたって持続可能な観光エリアにすることを目指して住民と行政が協力して事業を進めている地域。また、松本-高山ビックブリッジ構想(※)の利用拠点としてアルプス山岳郷エリアが担う役割はとても高いものだという認識でいます。持続可能な観光地として、住んでよし、訪れてよしの地域として発展することにより、関係人口の増加が図られ、地方創生のモデル地区になることを期待したいです。そのためにも、今後さらに地域関係者との関わりを深め、地域の金融機関として積極的な関与を大切にしていきたいと考えています。」

※松本から高山までの魅力向上策、プロモーションの実施:観光活性化

立岩さん「この地域で事業者さんが事業を継続していけることが前提で、そのベースがあってこそ訪れる方、住む方がこの地に増えて持続可能な地域であり続けられると思っています。エリアの担当として、私自身は事業者さんが何か新しい取り組みをする際や何か問題が起きた際に、意見を交換しながら、最適な課題解決策を提案・サポートしながら、地域を一緒に盛り上げていけたらと考えています。この地域がとても好きなので、地域の一員として一緒に課題を乗り越え、皆さんと一緒に達成感を味わうことができたら嬉しいですね。まずはお客さまの話をよく聴くことからはじめ、ニーズをきちんと引き出すことを大切にしていきたいです。」

長野銀行が地域との関わりを深める背景には、「地域の一金融機関として、お客さまや地域のために、何ができるかをともに考えて、寄り添い伴走することで、持続可能な未来を築く銀行でありたい」という真摯な思いがあるそうです。

この地域がより良くなり、いつまでも続いていくことを願って、様々な取り組みの後押しを続けている長野銀行。波田支店で安曇エリアを担当する立岩さんと小林支店長の、言葉だけでなく行動で示す姿が印象的で、ますます頼りがいのある存在、共に地域をつくっていく仲間としての認識を改める、そんな機会となるインタビューでした。

◇長野銀行
https://www.naganobank.co.jp/

◇ecork project from 信州
https://ecork-project.com/
https://www.instagram.com/ecorkproject/

写真:セツ・マカリスター
聞き手・文:楓 紋子

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