取組インタビュー #03

22分

乗鞍高原 「GiFT NORiKURA Gelato&Cafe」

~アルプスエリアの古くて新しい食体験 その2~

2019年夏、乗鞍観光センター内にオープンしたGiFT NORiKURA Gelato&Cafe。地元や近隣地域の生産者から仕入れる、この地域ならではの素材をふんだんにつかったジェラートや、地元で焙煎された豆でいれるコーヒー、地元の果物をつかったジャムトーストなどが好評で、特に休日の店頭は大賑わいのようです。開店から1年。GiFT NORiKURAの今、そしてこれからについて、オーナーの藤江さんに話をうかがってきました。

▲GiFT NORiKURAにて 藤江さん(写真左)とスタッフさん

周辺地域の素材をふんだんにつかった こだわりメニュー

楓「今年はジェラートの他に、トーストなどの提供も始められたそうですね。GiFT NORiKURAでは今、どんなメニューが人気なのでしょうか。」

藤江さん「一番人気なのは、のりくらヤギミルクのジェラートです。この他に、乗鞍高原で栽培された、なっちゃん苺のソルベ、今年はもう販売を終了しましたが、奈川高原のブルーベリーのジェラート、乗鞍高原で宿を営むほし農園さんのりんごソルベ、また今年は知り合いの生産者さんから声をかけていただき、規格外の桃や梨などを使ったジェラートも提供しています。」

▲のりくらヤギミルクのジェラート

▲なっちゃんいちごのソルベ

楓「どれも乗鞍高原や近隣地域にゆかりのある素材ばかりですね。最近はジェラートを目当てに乗鞍高原へ足を運んでくださるお客様もいると聞きました。」

藤江「ジェラートマニアの方にもリピーターになっていただいています。乳化剤や安定剤など添加物を使わず、この地域の美味しい素材をふんだんに使っているので、舌の肥えたお客様にも喜んでいただいているのだと思います。」

▲例えばヤギミルクは乗鞍高原内でのびのびと飼育されたヤギの搾りたてのミルクを使用。臭みがなく優しい味わいと好評。

▲高原内で栽培されたなっちゃんいちごのソルベも人気

持続可能な地域をつくるために、外側と内側に向けて動く

楓「もともと、観光センターに空き店舗の情報が入り、何か地域のためにできることはないかと考えてお店を始めたと聞きました。お店でジェラートを提供しようと思ったいきさつはどんなことだったのでしょうか。」

藤江「乗鞍高原が持続可能で元気な地域になるために、僕ができることは? と考えたときに、地域の素材を使って商品化することだと思いました。地域の特産に焦点を当て、それを外に向けてアピールしながら、地域内の生産者にお金を循環することができるからです。

そこで、この地域の特産を美味しく味わっていただけるもので、登山や高原内でのアクティビティの前後に喜ばれるものは何か? と考え、地元素材を使ったジェラートがいいのではないかと思いつき、提供を始めました。」

楓「実際に商品の提供を始めて1年が経ちますが、どんな手ごたえがありますか?」

藤江「地域の特産をアピールする方法として、ジェラートは素材の美味しさをそのまま味わっていただけるため、とても分かりやすく、今提供している種類以外にも様々な素材を楽しんでいただけるので、まだまだ可能性はあると思っています。」

楓「地域の素材をふんだんに使い、乗鞍を訪れる方に美味しく味わってもらう。これは地域内の生産者の方にとっても、お客様にとっても、嬉しいことですね。ところで、ジェラート以外のメニューも人気だそうですが、他にはどんなメニューがありますか?」

藤江「Norikura Pioneer Roasterから仕入れた乗鞍焙煎のコーヒーが人気で、コーヒー好きの方にも『こんなに美味しいコーヒーは初めて』と喜んでいただくこともあります。乗鞍高原で焙煎したてのフレッシュなコーヒーは、味わいが違いますね。

他には、地域の素材や安心な素材をつかったトースト、ホットドッグなどを提供しています。パンは乗鞍高原内のALICEdeCafeの自家製パンを仕入れています。ありすさんのパンが美味しく、トースト類は主にモーニングなどに好評です。また、乗鞍うまいもの工房の手作りおやき、YUMYUMTREEのバウムクーヘン、松本クラフトビールなどの提供もしており、どれも喜んでいただいています。」

▲のりくら焙煎コーヒー

▲特産の花豆をつかった花豆バタートーストにヤギミルクのジェラートが乗っているGiFTトースト

楓「本当に地域のたくさんの方々とタッグを組んで商品の提供をしていますよね。地域の食材を使うということの他に、GiFT NORiKURAのポリシーとして、使い捨て容器をなるべく使わないようにして、できるだけゴミを出さない『Going Zero Waste』がありますね。その点について、お客様の反応はいかがでしょう。」

藤江「おおむね好意的に受け入れて頂いていると思います。マイタンブラーの持参を推奨し、割引価格も設けているので、最近はタンブラーを持参するお客様も増えてきました。持続可能な環境をこの乗鞍で作っていけたら…と、店舗回りでできることから『Going Zero Waste』というメッセージを掲げて取り組んでいます。エシカルなコンセプトを持ったお店ということで、選んでいただくお客様もいるように感じます。今後、お店としてのメッセージなだけでなく、地域に広がっていったらいいなとも思っています。」

▲ジェラートカップ等使い捨て容器はなるべく使用せず、飲み物もタンブラー持参を推奨している

楓「地域への広がりというところで、GiFT NORiKURAでは、売り上げの一部を乗鞍のトレイル整備に充てるということも掲げていますね。現在の動向はどんな感じなのでしょうか。」

藤江「現在、まさにトレイル整備のプロジェクトが始まっています。環境省の力をお借りして、補助金を活用しながら、観光協会や地域内の有志の方々と一緒にトレイルの整備計画を進めています。乗鞍にはあちこちに散策道がありますが、迷いやすく標識も分かりにくい部分があるので、統一された案内標識を立て、誰にでもわかりやすいコースを作り、多くの方に楽しんでいただけるトレイルを整えようとしています。」

大好きな乗鞍の恵を より深く味わってもらうため 地域の人と歩む

楓「地域の特産をアピールすること、環境に配慮した店舗運営をすること、環境整備への取り組み、地域内に経済の循環を起こすこと…。お店や個人的な活動を通し、様々な側面から乗鞍地域を元気にする取り組みを進めていて、本当にアクティブ!ご自身では、その原動力は何だと思いますか?」

藤江「やっぱり、『乗鞍が好き』というシンプルな思いだと思います。歩くことがもともと好きなので、これまで様々な山やトレイルを実際に歩いて見てきましたが、ここ乗鞍は、アウトドアフィールドとして誰にでも優しい場所だと思いますし、この環境にはまだまだポテンシャルを感じています。この素晴らしい環境を維持していくために、一つ一つ自分にできることをしていくのみですね。」

藤江「僕自身、移住して5年経ちますが、少しずつ地域の方との関係性が変わってきて、様々な方と協力関係を築けるようになってきました。最初の頃は、「若造が何かやってるな」くらいだったと思うのですが(笑)、あれこれ動き続けているうちに、少しずつ信頼してもらえるようになってきているのかなと。とにかく、この地域が続いていくために、ここに住む人が生き生きと暮らせる地域になっていかれるよう、今後も動いていきたいと思っています。」

楓「最後に、今年は新型コロナウイルスの影響で、厳しい状況があったかと思いますが、今後、GiFTNORiKURAとしては、どんな展望をもっておられますか?」

藤江「様々な状況に対応できるよう、オンラインでの販売にも力を入れていきたいと思っています。現在、ジェラートを通販できるように準備をしていますが、今年11月頃から『のりくらの恵セット』として、ジェラートの他、乗鞍うまいもの工房のおやき、ALICEdeCAFEの食パン、YUMTYUMTREEのバウムクーヘン、ほし農園のジャムなどを詰め合わせた、乗鞍高原ならではのセットを販売する予定です。どれも、この地域ならではの生産者さんの思いや、ストーリーの詰まった商品ばかりをセレクトしています。この地域の恵みを、ここに訪れたことのある方にも、まだ訪れたことのない方にも味わっていただけたらと思っています。乗鞍高原や周辺地域の食を通して、乗鞍をもっと好きになっていただけたら嬉しいですね。そして、結果として地域の活力にもつながればと思います。」

楓「乗鞍高原や周辺地域の恵みを、食やその職に携わる人、そして豊かな自然環境を楽しめるトレイルを通し、ますます多くの方に味わっていただけるといいですね。ありがとうございました。」


編集後記

「乗鞍の恵 乗鞍からの贈り物」というお店のコンセプト通り、この地域の豊かな自然の恵みや、この地域の人の営みから生まれる食やトレイルを味わってもらいたいと願う藤江さん。はじめは個人的なメッセージだったかもしれませんが、それに共感するお客様から支持され、一緒に動いてくれる地域の方々が現れ、観光客の皆さん・GiFT NORiKURA・地域の人・乗鞍の環境と相互の循環が生まれつつある、そんな印象を受けました。「どんな地域を」「どんな人と」「どんな風に楽しんでいきたい(もらいたい)か」 地域のメッセージを発信するショップとしても、GiFTNORiKURAの今後の展開から目が離せません。


GiFT NORiKURA gelato&café

〒390-1520

長野県松本市安曇4306-5

※駐車場 乗鞍観光センターに200台(無料)

営業日 月~水、金~日

定休日 木曜

営業時間 10:00~17:00

※土日祝は8:00~開店

※ラストオーダーは16:30

※冬季休業あり(11月~4月GWまで)


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