人口減少や環境問題など、「地域の課題をどう解決するか?」
この問いに対するヒントを探るべく、アルプス山岳郷では、2025年2月4日(火)に持続可能な地域づくりをテーマにしたセミナーを開催。今回は「日本一おかしな公務員」の著者であり、全国でまちづくりの実践者として活躍する山田崇さんをお招きし、地域課題の解決に役立つフレームワーク「セオリーオブチェンジ(ToC)」を学びました。
地域の未来を考え、行動につなげるためには、どのようなアプローチが必要なのか? 参加者は講演とワークショップを通じて、具体的な課題解決のプロセスを学びました。

地域課題解決の第一歩は「よい問い」から
山田さんは、課題解決の出発点として「よい問いを立てること」の重要性を強調。
「なぜ、いまこの課題が生まれているのか?」と問い、その問いをオープンにしていくことで仲間が集まり、行動が生まれるといいます。

さらに、地域づくりの実践においては、OODAループ(観察→理解→決断→行動) を活用することを説明。自身が取り組んできた塩尻での空き家活用の実例を交えながら具体的なプロセスを紹介しました。
こうした「問いを立て、行動する」プロセスは、地域に多様な人が関わるための土台をつくることにもつながります。では、異なる価値観を持つ人々が共に地域をつくるためには、どのような環境が必要なのでしょうか?
多様性と対話が生む地域づくりの可能性
地域づくりの現場では、異なる立場や価値観を持つ人々が関わり合います。こうした多様性を活かすためには、「対話を重ね、互いの考えを認め合うこと」が欠かせません。

山田さんは、「理想的なまちづくりの単位は約1500人」との考えを提示し、参加者とともに「適切な規模のコミュニティとは何か」を考えました。また、西粟倉村の「百年の森構想」などの事例を紹介し、地域ごとの特性を踏まえた取り組みの可能性を探りました。
しかし、地域課題に向き合おうと思っても、「自分にできることがあるのか?」「間違ったことを言ったらどうしよう…」と不安を抱き、一歩を踏み出せない人も少なくありません。そうした不安を解消し、誰もが安心して活動に参加できる環境をつくることが重要です。
心理的安全性が生む、地域課題解決の力
「地域のために何かしたい」と思っても、不安が先立ち、行動に移せないことがあります。
こうした心理的ハードルを乗り越えるためには、「誰もが安心して意見を言える場」をつくることが必要だと山田さんはいいます。セミナーでは、心理的安全性を高めるための工夫として、「愛」をテーマにしたアイスブレイクを実施。参加者同士が「愛と聞いて思い浮かぶ色や食べ物」を共有することで、場の空気が和らぎ、多様な意見を受け入れやすい雰囲気が生まれました。

また、対話を通じて「誰が正しいかではなく、何が最善かを考える」姿勢が大切だという気づきを得た参加者も。
地域づくりにおいては、安心して発言し、行動できる環境こそが、新しいアイデアや協力を生む原動力になるのです。
こうした心理的安全性を確保しながら、効果的に地域課題を解決するための方法として紹介されたのが、「セオリーオブチェンジ(ToC)」というフレームワークでした。
セオリーオブチェンジ(ToC)とは? ー 地域課題解決のための設計図
セミナーでは、課題解決のフレームワークとして「セオリーオブチェンジ(ToC)」が紹介されました。
ToCとは、「どのような変化を起こしたいのか」を明確にし、そのために必要なステップや影響関係を整理するフレームワークです。
地域課題解決の場面では、
- 現状の課題を観察し、因果関係を可視化する
- 解決策を考え、その実現に必要な要素を整理する
- どこにテコ入れすれば効果が最大化するかを見極める
といった流れで活用できます。

例えば、「ある地域に先生が集まらない」と考えたとき、
「なぜ先生が集まらないのか?」
「誰が関わることで変化が生まれるか?」
「小さな成功体験をどう積み上げるか?」
といった問いを立てながら、具体的なアクションを設計することができます。
ToCの活用によって、地域の未来を描きながら、一歩ずつ確実に前進する道筋をつくることができるのです。
AIが地域課題解決のパートナーに?
さらに、セミナーでは生成AI(ジェンスパークなど)の活用による地域課題解決の可能性にも言及されました。「本当にやりたいことに時間を使うために、AIをうまく活用することが重要」と山田さん。たとえば、
- 地域の現状を分析するための情報収集
- アイデアの整理や新しい発想を得るためのブレスト
- 企画書やプレゼン資料の作成サポート
など、地域づくりの現場でもAIが補助ツールとして活躍できます。
技術をうまく活用し、人の創造性と組み合わせることで、地域課題解決のスピードを加速させる可能性が示されました。

すぐに実践できる「ネクストステップ」
セミナーの最後には、参加者同士の対話を通じて、次のステップが共有されました。
- ToCのフレームワークを使って、自分の地域の課題を分析する
- 週30分だけでも地域活動やまちづくりを考える、もしくは取り組む時間を確保する
- 具体的に取り組む小さなアクションを決め、やめる日を設定する
また、セミナーに参加した地域おこし協力隊の結さんは、以下のステップを考えました。
- 山岳郷地域の課題や活動について、関係者と話し合う機会を設ける
- 4月に向けて、山岳郷地域の活動で変えるべきところ、やめるべきところを検討する

小さな一歩からでも始めることが、地域をより良くする大きな変化につながります。
本セミナーが、当日参加いただいた皆様の次のアクションにつながるきっかけとなれば幸いです。
私たちアルプス山岳郷もまた、地域とともに問いを立て、行動を重ねながら、課題解決の土壌を耕し続けていきます。
セミナーに参加できなかった方も、まずは「なぜ?」という問いを立て、身近な課題から考え始めてみませんか?
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